1292023年版(2022.10) ISO/TS 16975-1:2016及びISO 16975-3:2017への整合を図ることを目的として、2021年5月25日に、JIS T 8150「呼吸用保護具の選択、使用及び保守管理方法」が改正されました(以下、改正規格)。JIS T 8150は、1985年に制定され、前回の改正は2006年(以下、旧規格)に行われています。 主な改正内容については、次のとおりです。フィットテストの実務については、「呼吸用保護具フィットテスト実施 マニュアル」(2021年5月25日 日本保安用品協会発行)に詳しく取りまとめられています。フィットテスト 面体をもつ呼吸用保護具を着用する作業者は、呼吸用保護具を初めて使用する前、及び異なる面体(サイズ、形状、型式、材質又は製造業者)を使用するごとにフィットテストを実施しなければなりません。 法令によって、定期的な繰返しのフィットテストが必要になることがあり、少なくとも年1回の実施が推奨されています。定量的フィットテスト 被験者に規定の動作を行わせ、呼吸用保護具の面体内外の試験エアロゾル濃度を測定し、この値からフィットファクタを求め、その数値が要求フィットファクタ以上となるか否かを調べる検査です。 改正規格では、「発生エアロゾルを用いた定量的フィットテスト」及び「大気じんを用いた光散乱方式の計測装置による定量的フィットテスト」の方法が規定され、大気じんを用いたフィットテストには、標準の定量的フィットテストと短縮定量的フィットテストの2種類があります。定性的フィットテスト 「エアロゾル定性的フィットテスト」及び「酢酸イソアミル(バナナオイル)を用いた蒸気定性的フィットテスト」の方法が規定されました。フィットテスト実施前に、被験者が味覚又は臭気を感じることができるかを調べる「いき値スクリーニング」を行います。 「エアロゾル定性的フィットテスト」では、被験者は呼吸用保護具の面体を着用し、頭部を覆うフィットテスト用フードを被り、規定の動作を行う間、フード内に甘味のサッカリンナトリウム溶液又は苦味のBitrex®(安息香酸デナトニウム)溶液をスプレーし、味覚を感じなければ、その面体はフィットしていると判定します。要求フィットファクタ 着用者と面体とのフィットを評価するために必要な要求フィットファクタが、表1のとおり規定されました。 全面形面体及び半面形面体をもつものは、フィットテストで求めたフィットファクタが、それぞれの面体の種類の要求フィットファクタを上回っていることが要求されます。 定性的フィットテストによる結果が合格の場合は、フィットファクタは100以上とみなします。フィットテストの動作 標準の動作及び短縮定量的フィットテストの動作が、表2及び表3のとおり規定されました。 一旦フィットテストの動作を開始したら、呼吸用保護具の装着状態の調整を行ってはならず、調整を行った場合は、その試験は無効とし、フィットテストをやり直さなければなりません。 これまでに普及している光散乱方式の計測装置を使用する場合は、標準の動作(表2)を行う必要があります。短縮定量的フィットテスト(表3)を行うには、凝縮核計数法を用いた光散乱方式の計測装置[凝縮核カウンタ(CNC)]を使用する必要があります。用語の定義JIS T 8150:2021「呼吸用保護具の選択、使用及び保守管理方法」●フィットファクタフィルタからの漏れがない条件で、定量的フィットテストをした場合のフィットファクタ(FF)は、次の式によって求めることができます。FF=CoutCinCout:面体の外側の試験エアロゾル濃度Cin:面体の内側の試験エアロゾル濃度●有害性評価(HAZ ASM:hazard assessment)酸素欠乏、汚染レベルIDLHなどの有害性を特定する作業●妥当性評価(ADE ASM:adequacy assessment)有害性評価を実施した後に、吸入ばく露を許容範囲に低減する防護係数をもつ呼吸用保護具を特定する作業●要求防護係数要求防護係数は、次のいずれかの方法によって求めることができます。・特定の有害物質に対して、呼吸用保護具の種類又は指定防護係数を指定している法令に従う。・次式から、要求防護係数(PFr)を計算する。PFr=CCoutPCinCCout:呼吸用保護具の外部の有害物質濃度PCin:ばく露限界濃度(OEL)●指定防護係数改正規格で見直しが行われ、表4のとおり規定されました。●適切性評価(SU ASM:suitability assessment)妥当性評価を実施した後に、着用者、作業、作業強度、環境などを考慮し、それらに適した呼吸用保護具を特定する作業
元のページ ../index.html#130